警備員の仕事に万引き班の対応があります。これは非常にデリケートな問題で、新人の警備員や経験の浅い警備員には対応させません。一歩対応を間違うと、名誉毀損や侮辱罪など訴えられる可能性もあります。また従業員から連絡を受けて「逮捕してください」と依頼さる事もありますが、これも絶対にやってはいけない事の一つですね。
声掛けは店舗から出てから
商業施設で勤務していた時は、万引き犯を「リフター」と呼びテナントの従業員から連絡を受けて現場へ急行したり、防犯カメラで店舗を確認したりしていました。
そしてどんな場合でも同じ事が言えるのですが、従業員には必ず
「対象者から絶対に目を離さないで」
と伝えています。
万引きをしたと判断するという事は、対象者のカバンや衣服などに商品を入れたりしたのを見たからだと思います。
しかし、そこからふと目を離したスキに、商品を元の場所へ戻し所持していないかもしれないからです。
にもかかわらず、いざ声掛けをし商品を持っていなかったら、対象者はお店と声を掛けた警備員に対して冤罪として名誉毀損などで訴えられてしまうかもしれません。
また、万引きをしてからずっと目を離さずにいて、いざ声かけをするにしてもお店の中で声を掛けてはいけません。
犯行はまだ店内にいる間では、万引きと断定するには早すぎます。
偶然カバンに入っただけ
私が警備員として勤務している間は遭遇していませんが、万引きをしてまだ店内にいる時に声を掛けた時
「いや偶然カバンに入っただけ、知らなかった」
と言われてしまうかもしれないからです。
商品を持って店内にいる間はまだ会計が済んでいません。
もし本当に偶然カバンに入ってしまった場合、これも万引きか偶然かは判断できません。
これもお店側が勝手に万引きと判断してそれなりの対応をすると、後で逆に訴えられてしまうかもしれません。
先輩警備員から、カバンに偶然入ったとしても声を掛けて良いのはお店を出てから、と指導されました。
購入するつもりだったのに
店内にいる時に声を掛けてはいけない理由に、相手が購入するつもりで自分のカバンに入れている場合です。
本来なら、購入前に自分のカバンに入れてしまう行動自体がおかしいのですが、万が一声を掛けて
「手に持つのが邪魔だから、会計前だが自分のカバンに入れていただけ」
なんて言われてしまうかもしれません。
購入する気があるのに万引き犯に仕立て上げられた、と訴えられる可能性大です。
過去実際に万引き犯に声を掛けた事は何度かありますが、いづれもお店を出てから、という行動はどれも同じです。
会計をするつもりが無いと判断できるのが、お店の外に出た状態、に当たるので、万引き犯と断定し声を掛けるのは絶対にお店を出てから、と何度も教えられました。
未会計の商品がカバンに入っている時点で「万引きとしようとしている」と判断して間違いないと思うのですが、店内にいる間は「会計をする可能性がある」ので声掛けは厳禁です。
万引き犯を捉まえる、という事案は頻度が多いわりに成果につながりにくく、無実の相手を不快にしてしまう可能性や、捕まえられずテナントさんの期待に応えられない罪悪感などあまり良いものではありません。
一番良いのは万引き犯に対して「この施設はやりにくい」と思われるような日頃からの対応が重要だと思います。