以前、現任教育の時に講師役の上司が話していた内容で、拾得物の話を聞いていました。基本的に現任教育は退屈で、前回の現認と同じような事も話します。しかし、その時の内容は今でも覚えているほど強烈で、自分自身の警備員としての知識の一つとなっています。
現金の拾得物は厄介である
拾得物の対応の中で、財布などの現金が絡む対応ほど面倒な事はありません。
商業施設などの現場で勤務していると、むしろ避けて通れないほど発生頻度の多い業務です。
1日100件近く発生する拾得物対応で現金の拾得はそれほど多くはありませんでしたが、1件でも発生するとそれは面倒な対応なのです。
警備員として一番大変な状況は、日中の店内巡回時にお客様などから
「この財布、〇〇で拾ったのですが」
と声を掛けられるいうパターンです。
これは拾得者の権利が絡んでくるので、受け取って終わり、とならず権利を主張される場合は、警備員も拾得された方も色々と大変ですね。
警備員がこの拾得物に関して色々と学んでおかなければならないのは、対応を間違うと大変な事にもなるからです。
拾得物の範囲は敷地内だから
拾得物の対応は自分の勤務する敷地の中だけが該当します。
自分は警備員で、出勤途中の道端で財布を拾ったので、勤務先の拾得物の台帳に記入した。
なんて、とんでもない対応をする警備員はいないと思いますが、この様に自分の勤務する施設の敷地外で発見した落とし物を、施設内の拾得物として扱ってはいけません。
外で発見した拾得物は、その拾った場所で届け先が変わるのです。
まあこれは、警備員の方ならわざわざ説明するまでもない常識ですよね。
この様な事は警備員としては当たり前な事ですが、現任教育では警備員になってまだ間もないような人や、拾得物の対応に関してまだよく理解していない警備員も参加している為、面白いたとえ話を聞いたことがあるのです。
冗談話として理解しやすい
ある現任教育に参加した時に、講師の方が面白く判り易い例え話をしてくれました。
「警備員は施設内で見つけた拾得物は対応しなければならないが、1歩でも敷地の外のモノは受け取ってはいけない。」
「敷地外の拾得物は警察が担当である、万が一その拾得物が事件絡みの物だった時、敷地外の物を受けた事も含めて間違いなく警察に絞られる」
「1歩外へ出たら、警備員は関係なくなり拾得者は自分で警察署へ届ける必要がある。」
「という事は、敷地内ぎりぎりに落ちている拾得物は、敷地外へ蹴りだせば無関係になる」
最後の文言はもちろん、その場で笑いを取るために言った話しだと思います。
それだけ、敷地内と敷地外のわずか1歩を境にして、届ける場所が違うのだという事を言いたかったのだと思います。
しかし、この冗談話はあまりのインパクトに、当時の私にはとても分かりやすく伝わり、10年は経った今でも覚えている内容となっています。
実際、商業施設で勤務していると来店されたお客様がインフォメーションに拾得物をお持ちいただく中に
「お店の外の道路に落ちていました」
と、明らかに敷地の外で拾ったものをわざわざ届けてくれる方がいらっしゃいます。
しかし、残念な事に敷地外のものは警察署へ届ける事になっているので、インフォメーションのお姉さんは受け取りをお断りしているようでした。
まあ、せっかく拾ってお店まで持ってきたのに「自分で警察署まで持って行ってね」なんて言われたら「ええ、面倒くさいな受け取ってよ」となりそうですよね。まさか敷地外のモノを受け取ってくれないなんて思ってもいないでしょうから。
そう考えると、受付を断るのもさぞ一苦労な事でしょう。
そんな拾得物も今の現場ではほとんど皆無な状態です。
拾得物の対応をした事のない隊員もいるようで、ここで極まれに発生した拾得物があったのですが、何度も経験している者からすれば大した対応でもないのに結構大騒ぎな状態になっていました。
次回はいつ拾得物が発生するか分かりませんが、この現場ではいつまで経っても拾得物の対応に慣れる事は無いのかもしれません。