商業施設での勤務当時、ホームレスを相手にした対応を何度かしました。大抵インフォメーションや事務所から内線が入り、警備員が駆け付けるのですが、いつも最後には施設から外へ出す事になるのです。買い物をするでもなく色々と迷惑な行為をするので、買い物へ来たお客様からすると気持ちよく過ごす事が出来ないのので外へ出てもらうしかないのです。
商業施設はホームレスのたまり場
色々へ施設警備の現場を経験しましたが、商業施設が一番ホームレスが多いと思いました。
他の施設でもホームレスが来ない訳ではないのですが、施設の仕組みとして不特定多数の誰でも入る事が出来、また施設のサービスも利用できるので、ホームレスが自然と集まるのでしょう。
まず一つあげられるのが
・快適な環境である事
これは言うまでもなく、館内は年中空調が効いていて、夏でも冬でも館内にいるだけで快適に過ごせます。
ホームレスは年中外という厳しい環境で過ごしているので、警備員の当たりが厳しくない施設ではホームレスをよく見かけます。
・施設のサービスを利用できる
商業施設では、館内誰でも利用できるサービスがあります。トイレや水飲み場、横になれるベンチなど、ホームレスが1日中いても何不自由しない設備満載です。
簡単にこれだけでもホームレスが集まるには十分な施設が揃っている商業施設では、警備員がまともに仕事をしないとわらわらと集まってきてしまうのです。
私が勤務した商業施設でも警備員が一生懸命、ホームレスの対応をしたのですが、施設が余りにも広い為に配置の少ない警備員だけでは対応が追い付かず、毎日苦労した覚えがあります。
その中でも今でも覚えている対応は、個室トイレに籠るホームレスでした。
個室トイレで寝るホームレス
ホームレスが個室トイレに籠って何をするのかお判りでしょうか。
それは
「個室トイレに入って寝る」
多くのホームレスが個室トイレもしくは身障者用の大型トイレに入って長時間閉じこもって寝ているようでした。
これらのトイレ内は水場もあり、中も広くまた外にある公衆トイレとは違い快適な気温なので、ホームレスにとっては心地よいプライベート空間となっているようです。
しかし、商業施設の個室トイレは多くのお客様も利用されているので、施設にお金を落とすわけでもない、ただ寝るだけの為に個室トイレを独占するホームレスに使わせるわけにはいきません。
その為、ホームレスが館内にいる事がわかると様々な部署から連絡が入り、警備員がマークし、館内のベンチで寝ていたり個室トイレに入って出てこない事がわかると、声掛けをしてベンチで寝ているのを起こし、外へ出したり、個室トイレへ声掛けをし直ぐに出るよう促すのです。
このやり取りを何度かしていると、ホームレスにとっては
「この施設は警備員がうるさくて居心地が悪い」
と知れ渡り、だんだんと来訪件数が減るのです。
私が勤務していた当時も、ホームレスが増えてきたのを確認し、警備員もその対応に集中しました。
そのおかげがあってか、いったん増えたホームレスも数が減り顔見知りにまでなったホームレスも施設に来なくなるのです。
施設に来ないと逆に心配になる
商業施設にホームレスが来なくなると、警備員が対応する余計な面倒も減り、他の業務に専念できるようになります。
結果として、施設警備員としての仕事の効率も上がるので、クライアントに対しては良い結果を生む事にも繋がります。
しかし、施設警備員同士でふとした事で話題になりました。
最近めっきり来なくなった顔見知りのホームレスがみんな気になるのです。
「あのホームレス最近見ないけど、まさかどこかで・・」
特に冬の寒い時期は、外で寝ると凍え死んでしまうかもしれないので危険です。
いくら無関係のホームレスでも、我々警備員が施設から追い出した手前、何の責任は無いにしても何かバツの悪い感じもします。
警備員が追い出さなければ、施設内の温かい館内で凍えずに済んだのに。
しかし、そんな心配もある日吹き飛びました。
「どうやら近くの商業施設で目撃例があった」
と。施設内には従業員もホームレスに関しては気にしている人も多く、最近来なくなったホームレスに一応、他の人も気にはしていたようです。
そんな人が休日によその施設へ遊びに行った時に、その施設内で例のホームレスを見たとか。
世間は狭いというか、どこか追い出されても何とか行く当てはあるようで、彼らもたくましく生活しているようです。
私個人でも、仕事の通勤の車の中で、朝早くに路上を歩いている例のホームレスを見かけた事もあり
「お、あれは例のホームレス。生きてる生きてる」
と、何気に喜んだこともあります。
警備員は自分の勤務する施設内でホームレスを相手に対応する事がありますが、相手をする頻度が多ければ多いほど変な親近感も生まれるようです。
しかし、施設にとってはある意味「迷惑なお客さん」でもあるので、一応毅然とした態度で接する必要はあるので注意が必要です。