地方の大型商業施設には今どきでも騒音をまき散らすバイクに乗ったヤンキーがやってきます。その都度警備員が総出で出動して対応に当たるのですが、毎回顔を合わすので「やあ、今日は何しに来たの」と挨拶をし、半ば友達にでもなったような錯覚を起こします。
騒音バイクで来た所をお出迎え
地方の商業施設では、都会では絶滅したであろうヤンキーがバイクに乗って遊びにやってきます。
大抵、違法改造バイク5~10台くらいで、年齢も10代くらいの未成年の子らが殆どです。
施設側としては「問題を起こすかもしれない」という事で、警備員へ出動の連絡が入り、待機中の隊員も呼び戻され総出で対応に当たります。
声を掛ける隊員や、周りを遠回しに囲うように隊員を配置したりと様々です。
一応何も問題はまだ起こしておらず、遊びに来たお客様という状態なので追い返すわけにもいかないので、話しかけて様子を探るか遠巻きに注視するしかないのです。
もちろん、乗り込んできたバイクは別の隊員さんがナンバーを控えて、いざという時に警察へ提出します。
万が一、盗難届の出ているバイクの可能性もあるそうなので。
館内に入ってきたら張り付きマークせよ
館内にお客様として来店したヤンキーたちは、多くの警備員にマークされつつ、また警備員と会話しつつ小一時間ほど過ごします。
さすがに警備員が近くにいるので、目立った行動はしません。
もし、ここで悪さをしてしまえば目の前にいる警備員からすぐに警察へ通報されるのを知っているからです。
そんなの上等、という気性の荒いヤンキーもいますが、警備員もまだそこまで非情では無いので「まあ、まあ」といった感じでなだめています。
我々警備員も施設を守る仕事があります。
決められた仕事が決められた時間でやってくるので、最後までヤンキーの相手もしてやれないのです。
一人また一人と警備員を減らし、最後にはヤンキーの近くでの見張り一人と、防災センターの監視カメラで彼らの動向を観察します。
彼らは大抵フードコートで机を囲んで騒いでいます。
警備員が周りからいなくなって安心したのか、騒ぎのレベルがだんだんと上がってくるとそのうち、施設の備品を手荒に扱う様になります。
近くの植栽をちぎったり、行列用のベルトパーテーションで遊びだしたりするのです。
さすがにこれを見過ごすわけにはいかないので、数名の警備員とクライアントの従業員で現場へ急行します。
見張りでいた警備員と合流し、クライアントがヤンキーたちに対し先ほどの行為について説明をし、退店を促します。
ここで素直に言う事を聞いて帰る集団も居れば「うるせぇーなぁ」と笑って知らん顔をする集団もいます。
そういう態度をするヤンキーたちに対してクライアント側の鉄槌が下ります。
そう
「出入り禁止」
です。
悪さをして出禁になるまで
退店を言われた時に素直に聞いていればよかったのに、笑って無視するような態度を取れば、クライアント側も黙っていません。
彼らのせいでフードコートに入るのを躊躇するお客様が居れば、ガラの悪いヤンキーが館内に居るとお店の営業にも影響が出ます。
それを我慢して見逃してきたのに、施設の備品を破壊し注意を受けても無視するようではこちらも黙ってはいません。
出入り禁止を言い渡すと同時に、警察へ器物損壊罪として通報します。
それを聞いて、焦っていない様な素振りで急いでバイクまで戻ります。
クライアントが出入り禁止を言い渡した時点で、防災センター内では彼らの人着やバイクのナンバーを控えています。
全員分の顔写真が用意され、警備員は次彼らが来たら店内に入らせる事なく追い返すのです。
もちろんその時は、警備員全員とクライアントの手の空いている従業員全員と設備担当など、あらゆる人数をかき集めてヤンキーたちを追い返すのです。
あの時、素直に言う事を聞いていればまだ許してもらえたのに。
10年近く前の出来事ですが、今ではどうなっているか分かりません。
当時10代の彼らも今では子を持つ父親になっているかもしれません。
そんな父親がもしかしたら今でも出入り禁止になっていて、うっかり家族で車でやって来たときどんな歓迎を受けるのでしょうか。